本研究は、算数・数学科のカリキュラム開発と評価に、「数学的活動」という新しい視点を組み入れることを意図し、小学校高学年における算数教育と中学校低学年における数学教育に焦点をあて、これらの学校段階間における接続性を、数学的活動という観点から打ち立てることを目的とした。 本年度は、数学的活動に基づくカリキュラムの実施と評価を行なった。実際には、小学校算数と中学校数学における数学的活動の実際的態様と、それらの学校段階間での接続性を検討するために、以下のような縦断的調査研究を実施した。調査対象として、本年度は、金沢市内の公立小学校第6学年の2クラスを設定し、当該のクラスで営まれる算数の授業を継続的に参与観察した。ここでは、約1カ月にわたり、比例の単元の授業について参与観察を行った。 調査方法としては、昨年度の研究成果に基づき、数学的活動における水平的数学化と垂直的数学化の態様の分析を行った。その際には、わが国の教室文化の特徴である一斉授業において社会的に組織される数学的活動の態様、特に、数学的活動に参加する上で、教師が提供する様々な支援形態と、児童に配分される役割や義務のパターンに着目した。 データ収集と分析の方法としては、授業の全般的相互行為が視野におさめられるよう、教室の後方にビデオカメラを1台設置し、教師と児童の発問・応答過程を記録した。データ収集と分析は、9月と10月初旬に実施し、比例の授業において特徴的な数学的活動と思考水準の発達過程についての分析を進めた。そして、小学校第6学年における数学的活動に基づくカリキュラム、特に数量関係領域の評価を試み、次年度に計画している中学校第1学年での調査に対する示唆を得た。
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