研究概要 |
本研究の目的は,それまでの先行研究(矢部.1998)において導出した子どもによる評価活動を構成する一連の諸活動(自己目標,自己活動,自己評価,及び,自己強化)に関して,研究協力者による継続的な実践的試行をもとに,学校数学における自己評価活動の理論的枠組みの構築を目指すものである。 そこで第一年次においては,第一に子ども自らが固有に設定する自己目標の具体的な様相を実践を通して収集するとともに,その様相の変容を分析・考察したものである。第二に,自己目標の様相と自己活動との関連,及び自己活動と自己評価との関連を教師の指導と集団による話し合いの内容をもとに考察したものである。第三に,成長・向上モデルとしての自己評価活動の枠組みの構築を目指し,自己評価能力を形成する諸要因の一つとして学習を共にする他者との関わりから検討し,自己を対象化する視点,及び自己評価の客観性について議論を展開したものである。 実証的検討の結果,「自己活動」は自己目標に対応した活動として位置づけられるとともに,「自己目標」は一連の自己評価活動を通して,自己の学びを対象化する視点としての機能が認められること。また,「自己活動」は自己評価の際の判断・価値付けの根拠として位置づけられるとともに,「自己評価」は自己の内に評価の視点と尺度の形成としての機能が認められることを明らかにしたものである。 研究協力者から提供された年間を通した自己評価活動の具体的な様相に関しては,今後分類の観点に基づく分析と考察を進めるとともに,実践的諸課題の解決を図っていくものである。また,自己評価活動の現代的・教育的意義の追究,及び自己評価能力を明確にすることも第二年次以降の研究課題である。
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