研究概要 |
本研究の目的は、自己評価活動の理論的な枠組みの構築を目指したものである。そのために、本研究は先行研究(矢部、1998)において導出した子どもによる自己評価活動を構成する一連の枠組みを再考し、実践的試行に関する諸課題の導出と自己評価活動の実際の様相を収集するとともに、自己評価活動の学習における機能と役割を考究したものである。 本研究の結果、第一に「自己活動」は自己目標に対応した活動として位置づけられるとともに、「自己目標」は一連の自己評価活動を通して自己の学びを対象化する視点としての機能が認められること。また、「自己活動」は自己評価の際の判断・価値付けの根拠として位置づけられるとともに、「自己評価」は自己の内に評価の視点と尺度の形成としての機能が認められることを指摘した。第二に、評価の解釈の議論(valuationとevaluation, evaluationとassessment)をもとに、自己評価概念の特徴として以下の4点を指摘し、本研究で収集した自己評価活動の実際の様相に関する分類の視点を導出し、今後の分析・考察の観点を提出したものである。 自己評価概念の特徴は、1)自己評価の教育的意義は、学習者にとっては学びの改善であり、教師にとっては指導の改善であること。2)自己評価の判断・価値付けは、学習者の学びの可能性及び教師の指導の可能性を前提とすること。3)自己評価の視点は自己目標に対応するものであり、その対象は自己活動の様相であること。4)自己評価の判断基準は学びに値する価値を見出すために学習者自ら設定され、その尺度は学習者個々の学びの可能性においてその都度定められること。
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