図学的手法による具体的な形状分析法を被服設計の中で展開し、人体形状と被服形状との有機的関係についての分析方法を教育するための新しい指針を検討した。平成11年度は、まず、実際の人体3次元データを被服図学教育の中で取り入れるための予備的研究を行った。被服設計教育では人体と被服という隣接した2つの対象を扱うが、両者の関係に対して、表現方法(表示方法)と分析方法という2つの内容を含む必要がある。今回は、教材として適当と思われるデータ形状について検討を行なった。 その結果、3次元計測によって得られた人体形状を、一つには比較的簡単なデータ構造を持つ3次元形状モデルとして表現し、被服形状はこの形状モデルの包絡面モデル、あるいは形状モデルそれ自体の側面展開図で表現することとした。単純な幾何形状でモデル的に表現した人体の特徴と、形状モデルによる変形とを組み合わせて教育していくことで、学生の理解を深めることができると考える。また一つには、学生が自ら操作できるように人体を被服設計上特徴的な位置の断面形状の集合として表すことを考えた。従来の被服設計が胸囲や胴囲、腰囲等の寸法をもとに行なわれてきたことを考えれば、断面重合図としての人体は被服を専攻する学生にとって、なじみ深いものであると考えられる。 今後は、これらのモデルを教材の中でどのような主題に添って処理していくかを考察し、実際の教材作成に着手する予定である。
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