図学的手法による具体的な形状分析法を被服設計の中で展開し、人体形状と被服形状との有機的関係についての分析方法を教育するための新しい指針を検討した。被服設計教育における到達目標の一つは衣服原型に関する理論的側面を理解させることであり、人体あるいは被服形状をモデル化することにより、両者の関係を視覚的により明確に理解することができると考える。被服設計教育では人体と被服という隣接した2つの対象の形状を扱うが、両者の関係に対して、表現方法(表示方法)と分析方法という2つの内容を含む必要がある。今回は特に教材について検討を行なった。 結果として、3次元計測によって得られた人体形状を、比較的簡単なデータ構造を持つ3次元形状モデルとして表現し、投影図の手法を用いて観察させることを試みた。その一方で、被服形状をこの形状モデルの包絡面モデルで表し、その側面展開図として衣服原型の基本形状を示した。また、単純な幾何形状とその展開図の関係からモデル的に人体の特徴、および動作を表現することによって、衣服原型上、重要なポイントを説明するように試みた。このように形状モデルとその展開図、あるいはモデルの変形とを組み合わせて教育していくことで、学生の理解を深めることができると考える。また、学生が自ら操作できるように人体を被服設計上特徴的な位置の断面形状の集合として表すことを考えた。従来の被服設計が胸囲や胴囲、腰囲等の寸法をもとに行なわれてきたことを考えれば、断面重合図としての人体は被服を専攻する学生にとって、なじみ深いものであると考えられる。断面重合図から展開図を作成して模型を制作させ、形状を立体的に観察させることもできる。これにより体形や姿勢、動作などが被服に及ぼす影響を立体と展開図上で対照させて確認することにより衣服原型設計上考慮すべき点についての理解が深まると考えられた。
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