言語教育が単に言語構造や語彙の修得にとどまらず、対象言語の文化的・社会的背景を同時に提供することが、学習者の動機付けとなり効果も大きくなるのは議論の余地がない。しかし、その教材作成には従来の方法では時間・労力・費用が非常にかかり、現場教師の負担が無視できず、結果として市販の教材を適宜利用しているのが実状である。 本研究では、第一段階として、まず言語・文化・社会情報を埋め込んだマルチメディア型教材を「地図帳」の形式で容易に作成できるツールの開発を行った。これまでの紙の媒体の二次元的な言語地図集の欠点を補う、画像・動画・音声を統合しオブジェクト化した三次元マルチメディア型言語地図作成の自動化と、さらに本来の研究目的に加えて、学生の教育に直結した語学教材の開発に至るまで活用できる可能性を開いた。 第二段階として、その応用分野として汎用性を高めた教材作成用のツールを開発し、言語教育・異文化理解教育にも貢献し、学習者の能力開発と自己評価を容易にするインタラクティブ性を高めた、マルチメディア型日本語教材の試作を開始した。 その成果は、数回の研究会を経て、論文「三次元マルチメディア処理技術を応用した言語教育教材用ツールの開発研究」として2000年3月に刊行された東京外国語大学語学研究所編『語学研究所論集』第5号(p.25-52)に掲載された。また、2000年12月に開催された「外国語教育学会」にて「Webインターフェイスを活用した外国語練習問題の可能性」と題した研究発表し、英語のみならずフランス語・タイ語・日本語など言語教育教材にも適用し、現在それを元にした論文を刊行準備中である。また、本研究の成果はCD-ROMの媒体で複製を作り、同時にネット上で公開している。
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