研究概要 |
本年度の実施計画では (1)手書き文字の筆記情報の計測と解析および文字変動に対する認知構造の解明 (2)解析結果に基づく手書き過程のモデル化 であった. (1)については,被験者が文字を筆記する際のストロークごとの字形の時系列情報を計測し,解析した.液晶タブレットにより筆記者の手書き文字をストロークごとの時系列情報として収集するシステムを構築した.さらに,実際に筆記者のストロークのデータを収集し,時系列データの性質を考慮した方向線素パターンに変換してその変動を解析した. (2)については,手書き文字を方向線素パターンに変換し,その重ね合わせに対する方向線素エントロピーに基づくモデルにより人間の文字変動に対する認知過程の解明を行った.その結果,方向線素パターンにボケ処理(ガウス重み関数のたたみ込み処理)を導入することにより,従来法よりも人間の主観評価に近い評価が可能なモデルであることが明らかになった.さらに,従来の文字変動評価法に比較して文字の変動量が小さい場合の評価結果を人間の主観評価結果に一致させることができること,30文字程度の文字数で変動評価値が推定できること等を明らかにした.このモデルを用いることにより,従来法よりも人間の文字の個性と変動に対する認知構造に適合する文字生成が可能であると考えられる. 来年度は,これらの成果を踏まえて,人間の文字変動に対する認知モデルに基づく筆記者の個性と変動を伴った文字生成手法について検討する.
|