研究概要 |
人間が書いた文章には,同じ文字種が繰り返し現れる場合でも,全く同じ字形の文字が現れることはない.つまり,それらの文字は互いに変動を伴っている.そして,そのような変動ある文字に対しても,我々は筆記者の個性を感じとることができる.パソコン等で文書を印刷したり,表示する場合,このような手書き文字集合に類似した文字集合を利用できれば有用である.そして,情報教育においてこのような文字が使用できればその教育効果も高まる可能性があり,意義がある. このような背景に基づいて,本年度は,手書き文字を方向線素パターンを用いて表現することを前提に,手本となる文字パターンに対して方向線素の方向特徴を保存したまま線素の位置変動を付与する文字生成モデルを考えた.すなわち,ユーザの手書き文字を1文字種につき1文字収集し,ストローク毎の方向線素の時系列パターンに変換する.このパターンを手本としてファジールールに基づくボケ処理を加えて得られる重みの分布に基づいて線素を生成する方法を検討した.さらに,その分布に基づいて変動を付加した手書き風文字集合を生成することを試みた.その結果,本手法により,筆記者手書き文字を構成する方向線素の方向成分よりも位置成分の変動が大きい文字が生成できることが明らかになり,方向特徴量を保存したままで線素の位置に変動を与えた手書き風文字を生成できることが明らかになった.これにより,元の手書き文字集合の持つ方向特徴を保持した変形文字が生成できる可能性を得た.
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