研究概要 |
今年度は、「学習した知識が,文脈に依存するエピソード記憶としての知識であること」を実証するために、以下の2つの実験を完了した。また、実験実施に必要な準備(実験前の調査、設備備品の購入、実験ソフトの開発、実験協力者の訓練、予備実験の実施等)を行った。実験1では、学習を行う場所と学習とともに行わせる課題(共存課題)を複合させて、文脈を操作した。具体的には,場所Aと共存課題Aとを組み合わせて文脈Aを構成し,場所Bと共存課題Bとを組み合わせて文脈Bを構成した.場所Aは,部屋の片隅の2m×2mのスペースとし、場所Bは5.5m×5.2mの部屋全体とした.共存課題Aとして計算課題を行わせ、共存課題Bとして,割り箸を使って,金時豆を1個ずつ,カップからカップヘ移す作業を行わせた.符号化(学習)課題は、漢字2文字熟語4個を用いて、意味のある文を生成することであった。個別実験で、文脈A(あるいはB)のもとで、1分間の符号化課題と30秒間の共存課題を交互に行わせた。符号化課題は5回、共存課題は6回行わせた。符号化終了後、第3の場所(場所C)で、10分間の干渉課題(単語完成課題)を行わせた。そして、文脈A(あるいはB)で、作文素材となった熟語20個の口頭自由再生を行わせた。符号化文脈(A、B)xテスト文脈(A、B)の4つの独立群を構成し、15名ずつの大学生を、各群にランダムに割り当てた。実験の結果、有意な文脈依存記憶を検出した。実験2では、文脈を共存課題のみで操作した。場所は、全条件で、場所Bを使用した。符号化文脈(A、B)xテスト文脈(A、B)の4つの独立群に、10名ずつの大学生をランダムに割り当てた。実験の結果、有意な文脈依存記憶を見いだせなかった。以上の2つの実験結果から、知識形成初期においてエピソード記憶が依存する文脈は、場所や課題状況などの複合したものであることが示唆される。
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