研究概要 |
今年度は,まず昨年度に引き続いて,学習した知識が,文脈に依存するエピソード記憶としての知識であるか否かを検証するために実験3を行った.実験3では,学習を行う場所のみによって文脈を操作した.具体的には,場所Aと場所Bによって文脈を操作した.個別実験で,場所AあるいはBのもとで符号化させ,場所AあるいはBで口頭自由再生を行わせた.保持期間は10分間で干渉課題(単語完成課題)を行わせた.実験3では,有意な文脈効果を検出できなかった.実験1-3を総合すると,場所と課題の組み合わせによって,有意な文脈効果が生じるが,個々の要因のみでは文脈効果が生じないことがわかる.続いて,大学と自宅との間で文脈依存記憶が生じるか否かを調べるために実験4を行った.大学の実験室では12名までの集団実験で実施し,自宅では宿題方式で符号化や自由再生テストを行わせた.保持期間は1週間とした.その結果,有意な文脈効果を検出できなかった.この結果は,自宅と大学とで意味のある文脈変化がないためというよりは,自宅での実験統制の不十分さに起因できる.自宅と大学との間の実験は,ひとまず置いておくこととした. 続いて,多様な文脈下での反復が記憶を促進するか否かを検証するために,実験5と6を行った.いずれの実験も,同一材料を2回反復符号化させ,自由再生成績を比較した.2回の符号化は文脈AあるいはBのもとで行わせた.実験1-3と同様,場所と課題を組み合わせて文脈を操作した.実験5は1回目と2回目の間隔(IPI)が10分,2回目の符号化とテストの間隔(RI)が10分であった.実験6はIPIが10分,RIが1週間であった.実験5,6ともに,有意な条件差を見いだせなかった.実験5と6の結果のみからは,多様な文脈下での反復効果が無効であると判断するのは早計である.来年度にさらなる条件分析を進めることとした.
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