「総合的学習のカリキュラムづくりと評価」に関する研究について2年間取り組んだ。その研究の性格と成果は、大きく「理論研究」と「実践的・実証的研究」の2つに分けられる。 I 理論研究(カリキュラム・学習過程、ポートフォリオ評価) (1)アメリカでの「本物の学習」(authentic learning)、「プロゼクト・ゼロ」、総合学習(integrated learning)の理論を参照しながら、実際に学校見学やインタビューを通して、総合的学習の理論とカリキュラムの枠組みを明らかにした。 (2)総合的学習とは「教科の枠組みや境界を越えて現実味のあるテーマやトピックのもとに、自らを取り巻くさまざまな環境(自然・社会・人々)との直接的具体的な関わりや体験活動を通してその子の興味や関心を気づきを大切にしながら、問題解決を行ったり、その自身の学びや実践力を育てる学習である」と定義した。 (3)育てようとする能力として、コミュニケーション力、情報活用力、問題解決力、表現力、自己評価力、企画・実践力等が明らかになった。 (4)ポートフォリオ評価 活動的な知性(体験的活動)を中心した問題解決的な一人一人の子どもの「学びの軌跡」をとらえ、確かな学びの力(skills)を育てるため、プロセスに重点を置いた「学習のための評価」(assessment for learning)である。 II 実践的研究(カリキュラム開発の手続き、ポートフォリオ評価の方法、自己評価) (1)カリキュラム開発の手続きの開発とその実践(愛知県A市T小学校5年・6年生) 構想カリキュラム(総合的学習単元)「テーマ、ピック・ウェブ、ブレーン・ストーミング、リソースづくり」と学びのカリキュラム(個別化と共有化)、学習ファイルの作成 (2)総合的学習の実施過程にて、ポートフォリオ評価の実践 子どもの思いや願い、諸作品、自己評価カード等を収集した「学習ファイル」の作成を1年間に渡って行い、自己評価活動に生かした。同時に、地域の人々や保護者からの意見も取り入れ、「学びのネットワークづくり」の触媒の働きをすることも明らかになった。
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