平成11年度から2年間にわたる本件研究の最終年度の終結に当たり、研究成果を総括する。本研究は本件研究代表者の筑波技術短期大学における教育研究活動の集大成である。 平成11年度研究活動の主な成果は、日常の重度視覚障害者情報処理教育の実践から学生の数学力に疑問を感じたため、本学視覚部情報処理学科学生の基礎的数学力の調査を実施し、視覚障害との関連に於いて考察を試みたことである。調査結果は大学生の学力低下が全国的に憂慮される中で、障害者の高等教育に関する注目すべき資料となるものである。 平成12年度研究活動は引き続き資料の収集等知識体系の充実と共に、研究成果の取りまとめに充てられた。即ち、視覚障害補償ソフト試験用パソコンのハードウェアとソフトウェア両面の活用、デジタル録音(DAISY)の録音資料の収集、及び、視覚障害者教育関連資料の収集を行う傍ら、研究代表者年来の研究課題である日本語数学点字発達史研究を総括する成果として、日本語数学点字記号と同表記法の歴史的変遷を示す2つの表を編纂した。その結果、現行体系の継続符がごく最近になって新たに導入されたことなど、注目すべきいくつかの事実が明らかになった。また、パソコンによる自動点訳の発達に関連してか、厳密性を重んずるあまり、視覚障害者にとっての利用しやすさが忘れられがちな最近の記号制定の傾向も明らかになった。 研究分担者は年来の課題であった日英両言語による日本語点字記号一覧表を完成させた。これは今後の国際交流に大いに資する。最後に本研究を評価すれば、大筋で計画どおり点字記号体系の基盤が整備できたと言える。
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