本研究は、高等教育機関で共通に用いることのできる文学・美術史分野のデジタル化された教材を開発し、その利用効果を検証することを目的とした。平成13年度は3年度計画の最終年次にあたり、デジタル化資料の量をさらに充実させ、ウェッブ・サイトの内容を拡充するとともに、サイトの構成と内容に関する評価を行うことに主眼を置いた。教材化の対象としたのは、近世中興期[宝暦から天明(1751〜1784年)]の俳諧と文人画であり、とくに、与謝蕪村とそのグループに着目することによって、詩と絵画の関連を強調した特色ある開発研究を推進した。デジタル化のための資料は、書籍、書簡、絵画作品等であり、それらを静止画ないし動画に収め、それに書誌事項、翻刻、絵画解説等のテキストを対応させてきた。全体は俳諧部と絵画部に分れるが、それぞれの細部が有機的に関連するようデザインした。また、テキストは日本語と英語の両方を用い、メディアはウェッブ・ページ(インターネット)とCD-ROMの両方とした。 初年度には、すでに収集してある俳諧、絵画両分野の資料の整理と目録化から始め、デジタル教材としての構造のデザインを行うとともに、まず佐賀のサイト(http://www.nime.ac.jp/~saga/buson.html)において、ウェッブ・ベースでの開発に着手した。それ以降、収集・処理済みの俳諧、絵画両分野の資料に加えて、新たな資料の整理とデジタル化を進めるとともに、佐賀のサイトにおいて、ウェッブ・ページの一層の充実につとめたこのサイトのテキストは日本語と英語の両方で作成し、そこに静止画のイメージを加えている。サイトの全体は、蕪村に関する論考群、対象作品の目録部分、及び、目録中の主要な作品の解説付きの図録から成り、また、このサイトにアクセスする人が感想等を書き込める掲示板も用意した。なお、図録のうちの特定の資料については、より完全なデジタル資料を作成することとし、ダーリングがそれを担当して、蕪村原作、月渓挿画の句文集『新花摘』を対象に、その英文テキスト作成及び解説論文執筆を行った。さらに、開発したサイトの評価を行うために、アクセス・ログの数量的分析と掲示板への書き込み及び開発者宛ての電子メールの内容分析を行い、大学院生と大学生によるウェッブ・サイトのモニター調査を実施した。以上の成果は、研究報告書としてまとめるとともに、ブラウザー・ベースで利用することのできるCD-ROMを作成した。
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