本研究では、脳行動学の立場から、主体的行動力及姿勢は主体的行動の積み重ねによって育つと考える。そこで 、知識・技術をすべて自分で主体的に学びとるという形の探究方式の学習を計画し、福島県立医科大学看護学部大下静香教授、東洋女子医科大学短期大学大森武子教授の協力を得て、基礎看護技術の全課程のカリキュラム編成(2コ×半年間)をし、大下教授指導のもとに福島県立医科大学看護学部一年次学生100名に対して学習を実施した。(平成10、11年度) 学習は3〜5人の小グループで進めるもので、体位交換、シーツ交換等の要素行動について、学習者が看護者、患者、観察者の3つの立場をそれぞれ経験し、それぞれの視点で行動成立のための条件を探究し、それらを総合して行動を設計するという、課題探究型の演習である。 本年度はさらに、10年度の学習状況(指導者の観察による)及び、学習終了後の学習者の感想文(自由記入方式)により、学習者の行動姿勢を分析した。分析の結果は、感想の約80%が学習を肯定的に受けとめたものであり、注目すべきはそのうちの60%がこの学習の方式を積極的に支持する意見であったということである。学習の精神的肉体的大変さ(学習者の言)にもかかわらず、自らの頭と体を使って主体的に学習を進めていくことの充実感と面白さを述べている。それはとりも直さず、主体的行動姿勢の表われととらえることができ、学習状況の観察からもそれが汲み取れた。 以上のことから、次年度以降さらに課題事例の設定、教材の工夫、ラウンド方式によるカリキュラム編成の研究を加え、この学習の方向を進めていく計画である。
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