これからの技術者は、教えられた技術を正確にできるというだけでなく、その場の条件にふさわしい技術を自ら生み出すことのできる人間として育てる必要がある。本研究は、その日標に向かっての試みであり、福島県立医科大学看護学部大下静香教授、東京女子医科大学看護短期大学大森武子教授の協力を得て、看護技術の分野において、その教育のあり方を実践的に研究したものである。 本研究の最大の特色は育てるべき能力のとらえ方である。本研究では、育てるべき能力の中心となるものは、結果として表れた技術の形ではなくして、技術を表現すべき行動の場や対象に対する分析能力や情報収集能力、またその結果から行動のプロセスを設計する能力、そしてその場に積極的に出て主体的に行動していく姿勢であるととらえた。そして、それらが総合されて生み出されたものが、技術として表現されたものであるととらえたのである。 そうした能力は、具体的な行動の場で、対象に向かって五感を働かせ、情報をとり、脳を活動させ、分析整理しその結果を身体で表現し、言葉で表現し、その結果をまた分析していくといった試行錯誤の積み重ねの中でこそ身につくのであると考え、基礎看護技術の全課程について、学習者主体の探究的行動学習を計画したが、実践された学習の状況や学習者から得た感想から、この方向に間違いのないことを確信した。 そして、実践の結果から、主体的な看護技術者を育てるための、看護技術を中核においた看護教育の新しいカリキュラム編成の考え方を提案し、それを実践していくための課題の整理を行った。
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