平成11年度は、次の2つの成果をおさめることができた。ひとつは、アイヌ民族が北海道の「開拓」に関連してどのように記述されているかを明らかにしたことであり、今一つは、札幌市の多くの小学校で使用されている社会科副読本の執筆者にインタビューを行い、その副読本におけるアイヌ民族記述の内容が、どのような観点から選択されているかを聞き取ったことである。以下、この2点について詳述する。 1)「開拓」記述とアイヌ民族 今回分析対象としたものは、道内各市町村の小学校において平成9年度の学習に使用されたものであり、14支庁133市町村に亘るものである(道内全副読本のおよそ60%になる)。但し、道内最大規模で使用されている札幌市の副読本は、この時点では収集できていなかった為に、分析対象の中に入っていない。 分析の結果、次の3点が明らかになった。 ・「開拓」がアイヌ民族にとってよい側面も悪い側面ももっていたというように、両側面があったことを記述している副読本は、5.3%でしかなかった(一方、「開拓」と関わる記述がない市町村は、73.7%ある) ・地域差がかなり見られ、道南の諸支庁の市町村の副読本には、「開拓」とアイヌ民族とのかかわりに関する記述は殆ど見られない。 ・記述選択原理としては、北海道教育委員会が新しい方針を打ち出しているにも関わらず、従来の内容踏襲とい得るものをとっている市町村が多々ある。 2)札幌市の副読本の内容選択原理 少数民族の復権というような政治的/社会的な理想ではなく、学習者である子どもたちに「すんなり入っていくもの」ということが最大の内容選択原理であることが明らかになった。
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