各地区の学校で筆者がこれまで考案した題材を具体的に実践し、その結果どのような「表現」が造形的に掘り起こされ、そこに実現されたある感じを児童・生徒が見つめ、その陶冶的意味を感受することで彼らが自己をどのように変えていったかを分析し、吟味した。 その結果として本研究の基礎概念が明確になった。「主題」という語は通常、両義的な意味を担わされている場合が多い。すなわち第一に「表現したいこと」であり、第二に「表現したいことが造形化されたもの」という意味で使用されることが、たびたび見られる。そこでそれぞれ前者を「絵画的胚胎のイメージ」、後者を「主題形成」と定義した。ただし「絵画的胚胎のイメージ」は以後、「絵画的イメージ」と略称することとした。 したがって「主題表現」という語を使用する場合、それは、「絵画的イメージ」の「造形表現」化を意味することとなる。また「主題形成」は、本稿においては上記の定義により、指導の宜しきを得て制作者本人の意図通り、絵画的イメージの造形化に成功し作品から感じ取られるべき美的感情を、意味させることとなる。 とにかく制作者は題材実践において、作品に現れた主題形成としての美的感情を丁寧に見つめることで、自己を超えた何ものかと結び合うという感覚が得られるのである。そこで、自己のあり方全体が変わり、新しい自己を発見したのである。また生き方を味わい深いものとするための普遍的展望を獲得できたことが検証された。
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