本研究は3年間継続研究を予定しており、今年度はその1年次としての研究を次のように行った。 1 小倉金之助らの科学技術、科学教育に関する見解を、戦後直後の科学者の発言・主張をもとに考察した。それは、戦前の「科学的精神」の主張と重なりながらも、異なったニュアンスが込められていたことを、明らかにした。 2 戦後直後の理科教科書作成における現場教師参加の実態に関する研究をおこなった。それは、中村重太氏らの先行研究に学びながら、戦後直後の雑誌記事をもとにした研究である。それは、現場教師が、全国を9ブロックに分かれて、戦後直後の教科書ならびに教育内容について、具体的に素案を出しながら検討しているという、他の教科には見られない試みであった。 3 戦後直後の科学技術並びに政策に関して、当時の自然科学者に対しての聞き取り調査により行なった。聞き取り調査では、現代科学を理科・数学教育内容に反映させるという主張において系統性が論じられるにあたっては、自然科学の総合的把握、体系あるいは系統性が講じられはじめたことも、一つの背景としてあったことを押さえる必要性があることが分かってきた。
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