平成13年度は、我が国に於ける敗戦当時のコア・カリキュラム、問題解決学習・生活単元学習理論の一般論との関わりを視野に入れながら、理科、算数・数学教育における問題解決学習・生活単元学習理論の再評価を行うことを目的とした。そのために、当時のカリキュラム理論、教育内容と方法論、題材・教材論の分析を行うとともに、教科における学力論・教育内容論、教材論、認識論(系統性と順次性)的検討を行った。 その内容としては、特に、戦後直後に理科教育論を教育実践に即して展開した田中実氏(元東京工業大学)の諸論を分析、考察した。田中氏は、戦後直後の生活単元学習、問題解決学習に対して、「理科は自然科学を教える教科」として捉えた上で、(1)「系統性」(科学の論理)と、「子どもらの自然についての認識を形づくる心的過程」を念頭においた「順次性」(子どもの生活・認識の論理)の両面への配慮が必要であること、(2)理科教育においても「系統性」とは一つだけではないこと、(3)「正確で順序正しい接近」の土台として「自由な接近」「多様な接近」を位置づけていたことを明らかにした。そこでは、その後の「理科教育の現代化」の主張が、「自然科学の系統性」を過大に強調しすぎていた可能性があることを指摘した。 また、我が国の教育内容に大きな影響を与えた米国理科教科書が、現在の米国においてどのように評価されているかについて、上記の研究視点と重ねながら、現地(米国ウィスコンシン州立大学オークレア地区)での資料収集、調査研究を行った。そこで入手した現代米国科学教育標準に関する資料を検討し、米国に於ける生活単元的学習に関する今日的評価について検討した。 本研究計画は3年継続であり、その最終年度であるので、これまでのまとめを冊子としてまとめた。
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