フランスの家庭科的教育における家族教育の「科学的概念」および「科学の論理」による構想化の特徴と問題点を明らかにすることを目的として、リセ(後期中等教育)における教科:Vie sociale et familiale(社会と家族の生活)の家族教育に関する内容について分析、考察を行った。 Vie sociale et familialeの家族に関する内容は、社会生活との関連で位置づけられており、家族集団(変化と多様性、組織と生活の方法)、家族と社会生活における子どもと青春期の若者(心理的発達段階、教育、学校教育と職業訓練、若者達のレジャー、社会保障)、家族と社会生活(社会の単位としての家庭、家庭と制度との関係)から構成されている。 教育内容の特徴は、(1)家族に関する広範で、高度に専門的な社会科学の知識や、子どもの発達と教育に関する心理学や教育学の知見と、活用可能な具体的な情報が中心、(2)社会の構成単位である家族を中心に、個人生活・社会生活(市民生活)・職業生活といった人間の生活を広く教育内容としている点にある。また、(3)社会と家族の生活を分析・総合して科学的認識を形成すること、例えば家族生活を対象に調査や事例研究などを行うことによって、合理的な考え方を獲得するといった生活実態と結びついた系統学習が重視されている。この点が、生活的概念(社会の多様な生活現象と自己の現在及び将来に起こりうる問題)を科学の基本概念を理解し、獲得することによって再構成し、現在と将来の自己と家族を分析し、どうあればよいのかすなわち家族観・生活観・社会観などを形成し、それに基づいて個人の人権を尊重しながらも市民として連帯と相互扶助を実践していけるための基礎を確立する系統的なカリキュラムの特徴であるといえよう。
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