研究概要 |
本年度は,構成主義的アプローチに基づく社会科授業方略の研究として,大きく理論的研究と実践的研究の2つの面からの研究を行った。 まず,理論的研究では,平成12年度の理論的研究を基に,米国および英国で発行されている構成主義的な社会科教育,中でもとくに構成主義的特色が顕著に見られる歴史教育のカリキュラム構成論と授業構成論(教授-学習論)に焦点を当てて研究を行った。構成主義的な歴史学習の典型例として,カリキュラム論や授業構成論の研究を実践的に進めているのは,米国の教師カリキュラム協会(TCI)が開発している中等レベルの歴史カリキュラム『生きている歴史!』である。このカリキュラムでは構成主義の中でも特に,社会的構成主義に基づいており,2つの内容構成原理,認識過程に関する3つの構成原理および単元設計に関する3つの方法原理を持っていることが明らかとなった,また,授業構成の原理として,(1)資(史)料と体験に基づく歴史の意味構成,(2)共同による歴史解釈の吟味と知識の発展,(3)既有の認知構造の利用と再構成による歴史理解の発展の3つがあることが明らかとなった。 構成主義的な歴史学習のもうひとつの典型例に挙げられるのは,テキストとしての歴史とその読みに焦点を当てて授業構成を行っている事例である。この授業例としては単元「レキシントン・グリーン再訪」の授業がある。この授業の分析から,テキストとしての歴史とその読みに基づく構成主義的な授業の中核的な授業構成原理として,「テキストの読みに基づく歴史の意味構成」があることが明らかとなった。 次に実践的研究では,これまで明らかにした構成主義に基づく社会科授業の構成原理を基にして,小学校および中学校の地理的内容の単元および地理的内容の単元を対象にして,構成主義的アプローチに基づく社会科授業の開発を行った。具体的には,小学校では第3学年の単元「私たちのくらしと商店」を中学校では歴史的分野の単元「鎌倉幕府の成立」(第1学年)を開発し,その有効性を実証的に明らかにした。小学校では特に体験活動の意義の検討を中心に,また中学校では構成主義的な考え方に基づく評価方法の有効性を中心に検討した。
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