研究概要 |
静岡県教育研究会の研究会誌を中心に小学校および中学校の家庭科実践報告を収集した。1966(昭和41)年〜2000(平成12)年、304件の学習指導の結果を分析対象とした。1.1970年代後半から子どもの学習指導法の研究になった。2.とくに1980年代、90年代に学習過程が細分化され子ども達の問題発見過程、問題解決の予想立てや実証、検証と各段階が設けられた。問題解決過程と学習過程を対応させてあった。子ども達の学習過程は各段階での五感を通した多様な学習方法を手がかりとして対象についての関心、知識・技術の本質や根拠、先人の知恵のすばらしさや合理性などの技術観、学ぶ意味の理解や自信などを獲得していった。多くは被服構成や食物領域などものと関わる題材で明確な効果を上げたと考えられた。人とものの関係理解、製作技術に込められた根拠を子ども達が発見し納得する学習過程、学習指導方法の研究はすぐれ之財産だと思われる。問題解決過程に対応した学習指導過程の各段階に、学習方法が位置づけられることによって子どもの体験的学習としての意味を発揮していた。3.1990年代以降の実践の特徴を整理した。(1)内容、題材、教材に,おいて個人や家族の生活を広い視野でとらえる家庭経済や住居の実践研究が進んだ。(2)教具、学習指導の種類、その活用範囲いずれにおいても多様性が見られた。シミュレーション、ロールプレイング、パネル・ポスタ発表、ジクゾー学習などの挑戦があった。子ども達の工夫が求められる学習の方法であった。(3)学習過程をユニットで編成し、緩やかな過程に進んできた。答えがいくつもあるような場合、子どもの追究が教室外に求められるような場合などに対応できるようになった。(4)学習形態は1980年代の班別学習を経て個別学習が各学習段階でとられるようになっていた。しかし、これまでと同様に学習過程において一人だけの体験にとどまるのではなく、教育的意義を発揮し体験的学習の意味を持つことに留意する必要がある。(5)個別学習の場面が多くなることによって教師の指導力の重要性が増した。支援よりも指導という用語が適切ではないかと考えられた。
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