論文「研究開発学校で英語に接した児童のその後の英語能力」において、国際理解教育の研究開発学校として、文部省より3年間の指定を受けた小学校(A小学校)で「英語学習」を経験した生徒の、中学校入学後の英語能力を、中学生になって初めて英語学習を開始した生徒の英語能力と、3つの実験により比較調査した。小学校で国際理解教育の一環として「英語教育」を行なう場合、何が期待でき、何を期待すべきでないかを調査した。 以下を調査課題として立て、実験を行ない、結果を分析することにした。 調査課題:英語授業を週1回3年間、合計105時間行なうと、次のような効果が期待できる:(a)英語教育経験者であるExは非経験者のNon-Exよりも音素識別能力に優れる。(b)ExはNon-Exよりも英語発音能力が優れる。(c)ExはNon-Exよりも英語で積極的に話そうとし、発話数も多くなる。 実験1として、音素識別テストを実施した。その後、ExとNon-Exの1年生の中から無作為に選んだ被験者(それぞれ20名)に対して、彼等の英語発音能力を測定し、両者の結果を比較した。これを実験2とする。さらに、実験2と同じ被験者に5分間自由に英語で話をして貰い、量的視点から彼等の英語発話語数を比較した。これを実験3とする。 実験結果は、Exの英語運用能力とNon-Exの英語運用能力とは全く変わらないというものであった。A小学校で実践された授業方法では英語能力の伸長に効果がなかった理由は、とても単純だと思える。それは、英語に接触する時間があまりにも少なかったためである。週1回で、教師からの発音指導もさほど期待できず、ビンゴゲームなどの遊びの要素の強いゲームを中心とした活動では、年35時間で、たとえ3年間継続しても、英語能力そのものの発達には、効果は期待できないということであろう。
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