研究概要 |
近年の育少年の喫煙・飲酒・薬物乱用問題の深刻化にともない,学校教育に対して有効な防止教育への期待が高まってきている。従来の学校健康教育は,知識の獲得に専ら焦点を当てたものであり,行動変容という観点からは有効ではなかった。しかしながら,我が国でも最近になって,妥当な行動科学の理論に基づいた喫煙・飲酒・薬物乱用防止プログラムや教材が開発され,広く利用できるようになってきている。ただし,多くの教師は,そうしたプログラムや教材を適切に活用するのに必要な能力が不十分なために,期待される効果をあげえないのが現状である。そのため,行動変容に有効な喫煙・飲酒・薬物乱用防止教育を普及するためには,現職教師に対する指導者研修が極めて重要な役割を果たすものと考えられる。本研究の目的は,従来の講義を中心とした一方的伝達型の研修会の限界を考慮して,参加型研修会(ワークショップ)を企画・実施し,その有効性について形成的評価を行うことである。 本年度は,まず全国都道府県教育委員会が主催する薬物乱用防止教育の指導者研修会の内容と方法について分析し,そのほとんどが予想されたように講義形式の伝達型の研修会であることを明らかにした。そこで諸外国の薬物乱用防止教育の指導者研修のあり方に関する研究成果に基づいて,福岡県教育委員会が主催する薬物乱用防止教育の研修会を企画・実施し,参加者に対する質問紙調査を研修会の前後で実施した。その結果,参加者のほとんどが参加型研修会(ワークショップ)を肯定的に評価していた。また,喫煙・飲酒・薬物乱用防止教育を実施する自信がある者の割合も,研修前の30%から研修後は72%に増加していた。以上のことから,参加型研修会(ワークショップ)は都道府県教育委員会レぺルでも実施可能であり,その効果は極めて大きいことが示唆された。
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