研究概要 |
平成11年度の研究目標は、以下の2点について明らかにすることである:1)高等教育(高校、大学、大学院)では、母語(策1言語)による「ライティング」教育がどのような方法でどの程度行われているか、2)「ライティング」に対する見方や態度について高校生、大学生、大学院生の間に違いはあるのか。この目標を達成するために、現在までに二つのアンケート調査を実施した。一つは、高等致育の「ライティング」教育の現状を把糧するために、「ライティング」の指導、作文/レポートを書く回数やその目標等について質問項目を作成し、高校生3年生(389名)と大学生3年生(336名)を対象に調査を行った。もう一つは、前者の結果を基に、「レポートの役割」と「引用に対する態度」について質問項目を絞り、大学生/大学院生を対象に調査を実施した。以下は、最初のアンケート調査の主な結果である。 1)日本の高等教育での「ライティング」指導は、アメリカの高等教育のようには、システム化されていない。高校で指導を受けた生徒は、42%、大学で指導を受けた学生は、39%とそれぞれ半数以下で、その指導内客も作文技術(主題文、段落のつくり方、全体の構成等)を十分扱ったものではない。提出した作文またはレポートに対して教師からのフィードバック(批評・助言)も少ない。 2)日本の高等教育では、「文章の内容」や「講義や文献の中にある主張や考え」を批評できる力よりも、内容の理解力の養成をより重視する傾向が強い。そのためか、自分の意見をまとめる力や文章の内容を批評できる力の養成が十分されていない。 3)レポートを書く際,「受けうり(他人の考えやことばを引用や出典に言及せずに自分の考えやことばとしてそのまま使う)」について大学生は必ずしも否定的ではない。他人の考えであってもそれを真に理解し同意すれば、自分の考えになりうるととらえている学生が多い。 以上、断片的であるが、上記の結果は、日本の高等教育において「ライティング」は大きなウエイトを占めていないことを示している。高等教育の目的との関連において「ライティングの役割」をさらに精査したい。
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