本研究は、記述分析法を用いた社会科の学習評価の具体的な在り方を探求し、そのモデルの提示を目的とするものである。授業でどのような社会認識形成がなされているかは、その授業で子どもが形成した知識の質を吟味することによって明らかになる。そのために有効なのが、子どもが自己の認識を何らかの命題によって間主観化したものを分析する、すなわち記述分析法である。 現在、記述分析法による社会科学習評価に関する先行研究は乏しい。具体的実践資料の体系的な収集・分類・整理すら十分になされていない。そこで、研究初年度、第2年度、第3年度は、現在ならびに過去においてなされた入学試験問題、市販のテスト問題・ドリル等の評価実践記録の中から、記述分析法を用いているものを広範に収集するとともに、それらの分析に基づいて、具体的な授業実践の学習成果を判定する論述問題の試案作成に着手した。 本年度は、引き続き資料収集を行うとともに、特にそれらの中から、大学入学試験における論述問題を取り上げ、解答者に何を記述させているのか、そのために、問題は何をどのように提示し、どのような問いかけになっているのか、といった視点からその構造を分析した。その結果、論述問題がその評価の妥当性を高めるためには、出題者の出題意図を正確に解答者に明示する事が必要であることが判明し、そのために論述問題を構成する要素である、問題文、リード文・資料・指定語句各々の働きを解明した。さらに、その成果をもとに、具体的な授業実践の学習成果を判定する論述問題の試案作成を続けた。 本年度は、研究最終年度であるため、以上の研究成果を報告書にまとめた。
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