本年度は、11年度に行ったアンケート調査に基づいて作成した入門期英語指導法に関するシラバスを、実証的に適用する試みを行った。具体的には、中学校1年生を対象とした教育実験である。本来は公立中学校で行いたかったが、問題も多いので、当初からの計画通り広島大学附属中学校に依頼した。具体的には次の手順で行った。これまでの教育研究で、授業には教師の要因が大きく影響することがわかっているので、その要因を排除することにした。同一教師が1年生の2クラスを担当し、1クラスは通常の進度で、もう1クラスは新しい方法(速度を3倍にし3回行う)で進めた。だが附属ということで、その進度の都合上副教材を使用するため、残念ながら1年間継続した研究ができなかったので、2回しか行えなかったが、ほぼ結果が予測できるものであった。 結果の詳細をここで述べるべきであるが、なにぶん大規模な研究であり、そのデータもばく大な量になっている。そのため、特に学力面を中心に、現在個人ベースでテスト結果を分析中であり、詳細は後日まとめる報告書を参考にしていただきたい。これまでの分析結果をまとめれば、やはり実験クラスは繰り返すことで定着率は高そうであるが、進度の速さから2度とも理解できなくドロップアウトする生徒も見られる。興味深い結果として、統制クラスではドロップアウトすればそのままの状態で回復できないが、実験クラスでは回復できる生徒がいることがわかった。なにぶん授業範囲の違いで共通テストがうまく行えないなどの問題も明らかになった。できればそれらの結果をもとに、さらに向上した指導法を提案したいと考えている。
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