平成11年度の研究計画は、文献研究と実験授業の設計の2つである。 1.文献研究について まずGattegnoの教育論の検討を通して、「子どもの学習力を生かすカリキュラム開発」の方法を考察した。氏の教育論のキーワードは「教授を学習に従属させること」「awarenessだけが教育可能であること」の2つにまとめることができる。前者の「学習」は、子どもが生まれながらにもっている自己教育力を意味している。その典型的な例は赤ん坊が自力で行う母国語の習得にみられる。この習得過程は子どものもつawarenessの力を存分に活用するとともに、その結果子どもたちにawarenessの力を無限に拡張することになる。このような観点から教授を学習に従属させることが、子どもの学習力を生かすカリキュラム開発になることを明らかにした。また諸外国のカリキュラム開発の動向については、いくつかの国の小・中学校の教科書などに基づいて、その理念や特徴を考察した。 2.実験授業の設計 Gattegnoの記述は概括的であり、具体的な指導例が示されていない。しかも我が国の指導法とは根本的に異なっているために、そのまま我が国に導入することはむつかしい。したがって氏の教育思想を尊重しながら、我が国の算数・数学教育で利用可能な形に、つまり日本化した形で実験授業の設計を行わなければならない。現在、数式領域についての実験授業案を広島大学附属東雲小学校の教官の協力を得て、検討しながら予備実験中である。
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