研究概要 |
平成12年度は「文献研究の深化」「教材開発と実験授業の実施」「研究成果報告書の作成」を行なった。 「文献研究の深化」では,平成11年度はGattegno教育論の2つのキーワード「教授を学習に従属させること」「awarenessだけが教育可能であること」の意味の解釈に重点を置いたのであるが,これらのキーワードをGattegnoが意識的に用いるようになったのは,1970年代以降であるけれども,それらはそれ以前の著作にも陰伏的に含まれているから,本年度はGattegnoの代表的な教具Cuisenaireの色棒に注目し,その理論的背景を考察した。これらを通してGattegnoの数学教育論は「数学は関係それ自身を研究する学問」という数学観と,精神の力に基づく認識論に支えられていることを明らかにした。 「教材開発と実験授業の実施」では,Gattegnoの述べる授業展開例は概括的であり,我が国のように指導内容が学年毎に明示されているわけでもないから,我が国の算数・数学教育の現状を考慮に入れ,オグデン(教え込むこと)とそれを知的に自由に操るmental dynamicsを活用することが,子どもの学習力を生かす算数・数学指導になるという立場に立って,我が国の算数・数学教育に適う教材開発を行うとともに,小・中学生を対象にした実験授業を行った。その結果はGattegnoが言う程の指導効果を上げることはできなかったけれども,原子論的指導理念を打破する1つの契機を与えることができた。 「研究成果報告書の作成」では2年間の研究成果をまとめた。
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