本研究は平成11〜12年度の継続研究であり、平成11年度の研究では、幾何の問題解決における生徒のミスコンセプションを同定し、そのミスコンセプションの特徴を明らかにした。本年度の研究では、幾何の問題解決における生徒のミスコンセプションを同定し、生徒にそのミスコンセプションを克服させる手段を明らかにすることを目的とした。また、生徒の問題解決活動を日仏比較文化的視点から考察し、生徒のミスコンセプションおよびその克服の手段について日仏比較文化的要因を明らかにすることをねらった。 この研究目的を達成するために、次のような教授学的実験を計画した。 実験1:紙と鉛筆による個人での問題解決活動の分析 実験2:紙と鉛筆によるペアでの問題解決活動の分析 実験3:カブリの利用による個人での問題解決活動の分析 実験4 カブリの利用によるペアでの問題解決活動の分析 実験結果からの代表的結論は、次の通りである。(1)生徒のミスコンセプションとして、図形把握についてのミスコンセプション、図形の任意性についてのミスコンセプション、証明の普遍妥当性についてのミスコンセプションなど同定した。(2)生徒にミスコンセプションを克服させる手段としては、問題解決の「手続き」を示すこと、証明における命題の生成条件を確認させること、社会的相互作用の場を提供すること、図形の動的視点を提供することなどを明らかにした。また、ミスコンセプションの克服の手段としての社会的相互作用の場においては、議論の仕方について日仏両国の精神文化の反映が見られた。
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