[研究目的] 平成11年度は、教師が学習者に与えるどのような種類の言語情報が、学習者の文法習得の(再)構築に貢献するのか、という点を実証的なクラスルーム・リサーチにより研究した。 [実験内容] 事前テスト→指導→事後テスト1(直後)→事後テスト2(一ヶ月後)の手順で、次のような実験群を設定した。 指 導 テスト方法 実験群A:インプット提示+メタ言語情報+反復発話 口頭テスト 実験群B:インプット提示+ 反復発話 口頭テスト 実験群C:インプット提示+メタ言語情報 口頭テスト 実験群D:インプット提示+メタ言語情報+反復発話 筆記テスト テスト項目として授与交替(dative alternation)に関する動詞を扱い、大学生を対象に英語による絵描写テストを実施した。統計ソフトGB-STATを用いた古典的テスト理論による分析とソフトRASCALを用いた項目応答理論によるデータの分析を行った。 [結果] 事後テスト1・2ともに、実験群Cの成績が実験群A・B・Dを上回った。 また、実験群A・B・Cにおいては、事前テスト<事後テスト2<事後テスト1、実験群Dにおいては、事前テスト<事後テスト1・2という結果になった。 [考察] 「インプット提示+メタ言語情報」という組み合わせの指導が、学習者の文法の習得に最も効果があった。繰り返しによる反復発話に指導効果が見られなかった点は、特筆に価する。指導直後に教師の文を単純におうむ返しさせる指導法は多用すべきではないだろう。また、「インプット提示+反復発話+メタ言語情報」の指導は、「インプット提示+反復発話」の指導と大差がなかった。尚、口頭テストと筆記テストという産出手段の違いによる差異も見られなかった。授与動詞という実験項目の特徴によるものと推定できるが、文法項目による違いを検討する必要があろう。 [今後の研究の展開] 平成11年度は、個人的適応型コンピュータ・テスト(CAT)の開発に向けて、文法判断力テストを被験者に与え、項目パラメータ値を計算した。この結果を基に、平成12年度は、被験者によってテスト項目数の異なるCATの実施方法を考案する予定である。
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