[研究目的]平坪11年度は、教師が学習者に与えるどのような種類の言語情報が、学習者の文法習得の(再)構築に貢献するのか、という点をクラスルーム・リサーチにより研究した。 [実験内容]テスト項目として、授与交替の動詞を扱い、大学生を対象に英話による絵描写テストを実施した。古典的テスト理輪と項目応答理論によるデータ分析を行った。 [結果]事後テスト1・2共に、実験群C(インプット提示+メタ言語情報)が、他の実験群を上回った。 [考察]「インプット提示+メタ言語情報」という組み合わせの指導が、学習者の文法習得に最も効果があった。練り返しによる反復発話に指導効果が見られなかった点は、特筆に価する。また、「インプット提示+反復発話+メタ言語情報」の指導は、「インプット提示+反復発話」の指導と大差がなかった。 [研究目的]平成12年度は、項目応答理論に基づく個人適応型コンピュータ・テストが日本の英語授業で適用可能かどうかを研究した。 [実験内容](1)授与交替、((2)前置詞付き動詞、句動詞、(3)心理動詞、(4)拠格交替(locative altemation)、(5)動詞句、形容詞、現在分詞、関係節、接続詞)の項目難易度パラメータを利用し、79項目の項目銀行(item bank)を作成した。PPTとCATを比較するために、各被験者のPPTデータを用いて、CATのコンピュータ・シミュレーションを行った。 [結果]79点満点のPPTでは、平均点43.9(SD6.39)、CATでは平均点0.58(SD0.28)であった。相関係数はr=.77で、PPTとCATの相関は非常に高いという結果となった。次に、出題項目数に則して、PPTでは全員79問を受けたが、CATの平均解答数は、43問であった。つまり、PPTとCATの出題項目数は、統計的に差があった(p=.0011)。更に、CATの出題数に対する正答率は、ほぼ半数(54.74%)であった。 [考察]実際の英語授業で得られた限られたデータを基に、項目銀行を作成し、CATを実施することは実用可能である。PPTと比べて、CATでは約半分の問題数で同じ個人能力推定値が測定できるため、CATの有用性として、テスト時間が短縮でき、テストの終了直後にテスト結果の提示と指算ができる点が指摘できる。CATは、通常の授業のみならず、学年始めのプレースメント・テスト等での活用も期待できる。
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