研究概要 |
本研究の目的は,数学的概念の形成における聴覚障害児の操作的意味への固執性と,その固執性の克服に他者とのコミュニケーションがいかなる効果を発揮することができるかを解明することである.この目的を達成するために,平成11年度は,目標(1)「数学的コミュニケーションによってもたらされる操作的意味と構造的意味の同定」,目標(2)「聴覚障害児のコミュニケーションの特性分析」,目標(3)「聴児のコミュニケーションの特性分析」と目標(4)「聴覚障害児と聴児のコミュニケーションの特性の比較」,について検討してきた.目標(1)と(2)については,コミュニケーションの主観性の原理に着目することで,メッセージに付加・解釈される意味として操作的意味と構造的意味があることを指摘し,特に聴覚障害児のコミュニケーションでは操作的意味への固執が見いだされることを指摘した.また,目標(3)と(4)について検討するなかで,操作的意味への固執は聴覚障害児に限らず,聴児のコミュニケーションにも見いだされることがわかってきた. 次年度は,目標の(5)である「聴覚障害児の操作的意味への固執性の同定」と,目標の(6)である「聴覚障害児の操作的意味への固執性克服の方策としてのコミュニケーションの効果分析」を行うことが課題である.
|