本年度は高専の機械系学科で標準的に使用されている熱力学の教科書を調査し、数学がどのように利用されているのかを明らかにした。特徴的な内容を述べると(1)専門科目で扱われる数式は、数学の授業で扱われるものに比べ、はるかに煩雑である。(2)比例関係の理解が最重要である。(3)微小量の扱いが数学的な厳密性は考慮せず大胆に行われる。(4)多変数関数の微分法が多用される。以上の結果を踏まえ、数学の教授法及びカリキュラムに関する提言を今後行う計画であるが、本年度中にまとめた事項の要点は(1)無理式や指数を含む式の計算に、より時間を割くこと。(2)微分法、偏微分法においては図形的物理的な意味の理解が重要。(3)積分法に関しては微小量の総和として図形的な理解を図り、計算演習は従来の教材の内容をかなり削除することが可能。(4)微分方程式についても物理的事象との関連で理解することが大切で、解法にかける時間は大幅に削減可能である。 また、微分方程式の教材開発及び問題集の作成を上記の観点に基づいて行い、同時に教授法に関する検討を研究分担者全員で行った。その他の研究事項として計画していた、前年度までの調査研究で得られたデータの整理分析に関しては、数学の各分野毎に収集整理をし、一定の結果を得ているが、まだ充分には達成されていないので来年度に継続する予定である。 本研究の主要目的は、応用数学カリキュラムを各専門共通のコアの部分と各専門別のオプションの部分とに明確に分離し、重要項目の徹底を図るように提案することである。数学の論理的な一貫性をしつつ、これを行うのは困難な点が多いが、初期の計画を進めて行く所存である。
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