研究概要 |
実際的な応用をもつ数学の多様化および数学の応用される分野の拡大とその態様が全て急激に変化している。本研究では、高専の専門教育につなぐ数学教育として(1)応用数学のカリキュラムとしてどのようなものが可能であるか。また、(2)何をどこまで教えるべきか。(3)授業の中でどのような教材を用いると効果的であるかといういくつかの目標を設定した。 (1)全国の高専での応用数学のカリキュラムを調査した結果、応用数学に相当する授業科目としては、微分方程式、ベクトル解析、複素関数論、フーリエ級数、ラプラス変換、確率・統計の全て若しくは一部が教授されている。それらの総単位数も限られており、極めて過密なカリキュラムといわざるを得ない。新しい分野に対応する応用数学の科目としては、計算機科学におけるグラフ理論、組合せ論、数理論理学、符号理論やゲーム理論などが挙げられるが、すでに伝統的な応用数学の授業単位でそれら新しい科目の入る余地がない状態である。情報系のコースでは前述した従来からの科目を大幅に削減することが多くの高専で実際に検討され実行されていることが分かった。(2)それぞれの科目においては標準的な教科書が存在し、それに従っておそらく全ての高専では授業が展開されている。結果としてその方法がもっとも効率的であるということであろう。本研究では授業科目とは異なるが4,5年生に対して実施されるゼミナールや卒業研究のテーマとして、微分法方程式とカオス理論を取り上げた。普段の授業では取り扱わない内容であるが、学生達にとっては興味のある内容であった。それらの研究結果を本冊子に記載している。(3)微分方程式、ベクトル解析、フーリエ級数、確率・統計、幾何学などの各科目において教材の開発を行った。それらの一部は実際の授業等の中で実践をして効果を確認している。
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