本研究は、中学校技術科教育における全国の優良な実践事例を収集・整理・分析するとともに、生徒及び技術科担当教員の学習・指導に対する意識調査を通して、教育的効果が期待される実践事例や他教科との関連性を視野に入れた学習指導の実態、ならびに総合的な学習の時間への展開の可能性を明らかにする事を目的としている。 昨年度から引き続いて優良な実践事例を集めるとともに、インターネットを通して技術科教育の実践例も収集した。その結果、設計・材料と加工技術の単元における「ブリッジコンテスト」、銅鏡の制作、ロボット制作とロボットコンテスト、ならびに共同作業によるベンチづくりなど、限られた時間数を有効に利用した多くの優良実践事例が見られた。これら以外にも、様々な工夫を凝らした多数の題材・教材が開発されていることが認められた。これらの実践事例は、単にものづくりにとどまらず、他教科との関連も深く、中学校及び高等学校における総合的な学習の時間における題材・教材として検討する価値があろう。 また、これらの事例分析とともに、優良な授業実践を行っている学校を選定し、技術科担当教員及び生徒の協力を得て、技術科授業の指導案、生徒の受け取り方からみた授業の評価、生徒の変容過程などの調査を行った。調査協力校7校のうち、沼津市立沼津第三中学校、藤枝市立青島中学校、藤枝市立藤枝中学校の3校についての分析の結果、授業の進行にあわせてものづくりに興味関心を抱くとともに、道具の機能、作業工程、ならびに共同・協力の重要性を理解する生徒が増える傾向が認められた。さらに、少ない授業時数や家庭科との関係から、綿密な授業の組立が極めて重要であることが明らかになった。 なお、調査対象が多く、また、各学校における教育課程編成上の理由のため今年度の調査が3学期におよび、全てを分析することはできず、さらに分析を進めているところである。
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