研究課題/領域番号 |
11680302
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研究機関 | 独立行政法人国立特殊教育総合研究所 |
研究代表者 |
笹本 健 独立行政法人国立特殊教育総合研究所, 肢体不自由教育研究部, 研究部長 (40141999)
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研究分担者 |
當島 茂登 独立行政法人国立特殊教育総合研究所, 肢体不自由教育研究部, 主任研究官 (10311185)
滝坂 信一 独立行政法人国立特殊教育総合研究所, 肢体不自由教育研究部, 研究室長 (70260023)
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キーワード | 会話の文脈 / STA / 重度・複障害児 / 書字・描画 |
研究概要 |
研究代表者が、いわゆる重度・重複障害児といわれている子どもたちに、STAを10年間にわたり行ってきたところ、そのような子どものおおよそ4〜5割が、通常の会話が理解でき、しかも書字や描画が行えたということさらに書字や描画が可能な子どもをおおよそ推測できるという体験に基づき、その根拠について明らかにしようとした。 その根拠の最大の観点は、子どもとの会話の際に、会話のセンテンスが終わった瞬間に子どもの前進的な動きを捉え、すかさず返事を返す、その時の子どもの反応の明確さや早さであると推測された。そこで、健常者(健常児)と、事例児における会話時の「身体の動き」の「やり」「とり」間のタイムラグを計測してみた。健常者では平均0.020秒、健常児では平均0.016秒、事例児(重度・重複障害児と言われているが、STAによる書字が可能)の平均が0.023秒であった。また、全ての事例(健常、重度・重複障害児)で、会話の文脈によりタイムラグに差異が生じる傾向があるということも確認された。 そこで、会話の文脈を大切にしながら、重度・重複障害児とのSTAでの実践を継続して行うこととした 種々の事例から示唆されたものは、(1)重度・重複障害児に対して、会話による発信とそれに対する何らかの身体の動き、が明確に行われる条件には、双方に何らかの話題性(文脈)が成立していなければならないこと、(2)会話の際の質問を「HOW」ではなく「YES」「NO」で応えられるようにすべき、(3)STAにより、文字や絵が描けると他人が認識したとたんに、彼らの行動や表情等が劇的に積極的に変化する、(4)例えば、自分の名前を文字表現することや天気の種類を文字表現するという能力と、文章表現するという能力必ずしも一致していない、以上等のことであった。 STAの実践における会話の「文脈」、会話をつなぐ相づちやそのタイミングの重要性、が知見として得られた。
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