平成12年度は、平成11年度に行った物理学論文に関する文型調査と工学論文に関するパイロット的研究の成果に基づき、対象資料の範囲を拡大して、引き続き文型の出現頻度を調べた。今年度は、論理構成の強い論文に対して、論理構成が論文ほどには強くないと考えられるジャンルである新聞社説(すでに分析を終えた日本経済新聞以外の三大紙:読売新聞、朝日新聞、毎日新聞)を資料として、どのような文型によって論が展開しているかという観点から、以下の方法で文型の出現頻度を調べ、分析した。 1.分析1 (1)中・上級文型を中心に単文型、文末文型、節末文型のほか複合助詞・接続詞も含む106の文型項目(昨年度は98項目としたが、今年度は項目を106に増やすことにした)の各使用頻度と論理展開に役割を果たすと考えられる漢語語句9語句の合計115項目の各使用頻度を求めた。そして、一文当たりの頻度に換算し直した値を求めて、各文型項目の出現率とした。なお、出現率を調べるにあたっては、用字の差異、文型項目の活用変化の形、文末表現の文中での変化の形を同定して同じ文型項目として扱い、全数調査を行った。 (2)115の文型項目は機能の観点から30の文型グループに分類し、その各文型グループごとに多変量解析法(判別分析)を用いて分析を行った。資料の大きさの差異は事前確率を用いて調整した。この方法により、論理展開が明確だと考えられる専門論文ならびに専門分野の教科書の文章と、それほど論理展開が明確とは言えない新聞社説の文章における文型的特徴が、どの程度異なるのかを明らかにすることができた。 2.分析2 昨年度作成した資料の分析結果と今年度作成した新聞資料の分析結果のうち、特に接続語句・助詞相当句の文章における出現率に注目し、判別分析を行った結果、接続語句・助詞相当句の出現率によっても高率で文章のジャンルが判別されることが明らかとなった。 なお、文型の検索と整理のための検索プログラムの改作は昨年度に引き続き行っている。
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