研究概要 |
本研究課題では,多変量モデルのパラメータ推定に関して,決定論的観点からの推定理論のサーベイと新たな展開を主に行った., (1)統計的推定理論のサーベイ。統計的決定理論はWaldなどによって数学的な枠組みが作られ本格的な研究が開始されてから50年の歴史を有する。平均ベクトル,分散,共分散行列の推定などの縮小推定及びベイズ推定に関する研究の展開をサーベイして論文として発表するとともに,様々な推定問題において従来の推定法の問題点を克服する新たな手法の提案とその性質の調査などについてもまとめ,この分野の全体が概観できる本格的な研究資料を作成した。 (2)行列平均の推定。多変量回帰モデルにおける回帰係数行列の推定について,最小2乗推定量を改良する縮小推定量の導出と改良のロバストネスを示した。特に最近興味がもたれている多変量混合線形モデルにおける予測問題は行列平均の経験ベイズ推定の枠組みでとらえることができるが,こうした問題において有効で有用な推定手法の導出を行った。 (3)共分散行列の推定。多変量回帰モデルにおける共分散行列の推定において平均の情報を利用したミニマクス推定量の導出が望まれてきたが,本研究課題において2種類のミニマクス推定量を新たに導出することに成功した。このうちの一方の導出方法は一般化分散の推定にも適用可能であり従来の結果の別証明が与えられた。 その他,縮小が必要が様々な推定問題を調査・整理し,理論的側面から縮小方法について検討した。
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