本年度は次の2つの研究成果を挙げている。一般化線形モデルの効果分析に関する研究では、一般化線形モデルをエントロピーの観点から議論し、因子の効果測度を考案した。一般化線形モデルの平均対数オッズが因子と応答偏量の連関を示すカルバック=ライブラー情報で表現されることを示した。因子の効果については偏効果、連関効果および全効果を定義した。定義する効果は(i)平均対数オッズ、および(ii)一般化された誤差変動に対する一般化された因子による変動の比として解釈される。ロジットモデルと二元配置モデルによる具体的な考察で、提唱する効果測度がそれぞれカイ自乗統計量およびF統計量に関係することを示した。この結果は論文Effect Analysis of Factors in Fixed-Effect Generalized Linear Modelsにまとめ、現在投稿中である。医療情報学でのウイルス感染システムの情報数理的研究では、人T細胞白血病ウイルス(HTLV-I)の感染システムに関して年齢による男女間の感染率の差を考慮したモデルを構築し、モデルの数理的性質を明らかにした。モデルはロジティック項を2個含む差分方程式で表現し、ウイルスの消滅と存続に関する必要十分条件を与えている。1997年の献血データを用いてシュミレーションを行い、ウイルス消滅における大きな効果は母子間感染確率により与えられることを示した。現在の母子間の感染確率はおよそ0.2であり、今後100年以内にHTLV-Iが消滅することが示された。この結果は論文Population Dynamics of the HTLV-I Infection : A Discrete-Time Mathematical Epidemic Model Approachとしてまとめ、現在投稿中である。
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