各個体について経時的に観測されたカテゴリカル・データを数量化し、時間に伴う個体の変化を空間布置によって表現する手法を考えた。すなわち、特に単一項目のカテゴリカル・データが対象である場合に、従来の数量化法(等質性分析)では個体の経時変化を数量化できないことに着目して、等質性分析の枠組のもとで、制約法とペナルティ法の二種類のアプローチを考案した。まず、ペナルティ法は、各個体における隣接する二時点のスコア(数量化得点)が類似することを要請するペナルティ関数を、従来の数量化法の目的関数(非等質性基準)と結合させ、ペナルティつき目的関数を最小化するアプローチである。この方法の数理的諸性質を考察した上で、単一個体の場合つまり対象が一個体のカテゴリカル時系列である場合に着目し、シミュレーションを行った結果、満足できる精度で真のスコアが再現されることを確認した。一方、制約法は、各個体の各時点のスコアを時間の多項式関数(成長曲線上の値)であると制約するアプローチであり、線形制約コレスポンデンス分析の一種と位置づけることもできる。この制約法については、さらに拡張を行い、個体のクラスタリングも同時に行う方法も考えた。すなわち、個体が小数の群に分類され、各群が固有の成長曲線で特徴づけられるという仮定のもとに、K平均スラスタリングによる個体の群別と各群の成長曲線・カテゴリースコアの算出を同時に行う方法を提案した。以上のペナルティ法および制約法ともに、アルゴリズムは固有値分解に基づく簡潔なものである点で、実用性は高いと考えられる。両方法の有用性をみるため、加齢に伴うテレビ番組カテゴリーの選好変化および飲料水カテゴリーの嗜好の変化を調べる質問紙調査を行い、これらのデータを解析した。その結果、提案法によって得られる空間布置から、加齢に伴う個体変化のトレンドを容易に見いだせることが例証された。
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