東京湾では沿岸自治体により継続的に水質測定が実施されている。水質汚濁防止法の制定に伴い公共用水域水質測定計画が策定されてから約30年、水質汚濁防止法に総量規制が導入され東京湾が指定水域に指定されてから数えても約20年が経過し、現在までに取得されたデータは相当量に上る。これらのデータを再活用し湾内の水質の長期変動について検討するため、東京湾内湾および周辺に位置する測定点50地点を対象に、表層(海面下0.5m)および底層(海底上1m)の水温、塩分、化学的酸素要求量(COD)、容存酸素(DO)、窒素、燐等の測定値の収集およびスクリーニングを実施した。スクリーニングの結果、総量規制導入前後を境とする種々の系統的変化を検知すると共に、全ての測定項目が季節変動しており、解析すべきデータが季節変動を内在する時空間データであるのを確認した。そこで、1985年度から1989年度までの測定値を試料に、ベイズ的方法による時空間季節変動調整法を開発・適用し、結果を論文等にまとめると共に、結果の一部をインドで開催された国際研究集会で発表した。 更に、熱帯降雨観測衛星に搭載された降雨レーダの観測量に基づく降雨推定に関し、雨滴粒径分布のパラメータ同定法および減衰補正法について検討した。前者については、結果の一部をカナダで開催された国際研究集会で共著者が発表し、後者については、ベイズ的方法を試作し動作を確認した。なお、現在、NASAからデータを取り寄せ、方法の更なる改良を試みている。
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