研究概要 |
統計的手法を実践するためには,計算機を利用する必要があるので,計算機技術の最新の進歩を統計解析システムに効果的に採り入れ,強力で利用しやすい統計解析環境を作成することは,統計理論と現実のデータの間を取り持つための統計学の重要な一分野である.特に,最新の技術であるインターネットの利点を生かすことができれば,統計解析システムはさらに使いやすいものにできるはずである.インターネット技術の中でも,ユーザインタフェースと通信による分散処理が,統計計算においては重要であると考えている. 本研究においては,特別なハードウエアやソフトウエアなどがなくても,現在のインターネット技術を利用して統計計算を簡単に分散処理できるようなシステムを提案することを目標とした.その結果として,プロトタイプシステムとしての統計解析システムJasp(JAva based Statistical Processor)を作成した.このシステムはJava言語で作成されており,多種の計算機上で稼働する.そして,ユーザインタフェースも言語も,分散処理を考慮して設計されている.システムはクライアント/サーバ構造で設計されており,ユーザインタフェースの部分と計算の部分を別々のコンピュータ上で分散して処理することが可能であるし,複数のサーバを利用するような実験的な機能も実現されている.したがって,当初の目的をある程度実現することができたと言える. 現時点ではJaspはあくまで実験レベルのものである.信頼性には問題があるし,機能の不十分な点も多い.これを実用的なシステムにするには,多くの改良と機能の追加が必要である.今後はそのような作業を行い,Jaspを実用的で有用なシステムに育てたいと考えている.
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