研究概要 |
一般に多次元の添字を持つ実数値確率変数は確率場と呼ばれる。本年度は昨年度に引き続いて積分幾何学的手法を用いた連続確率場の最大値の分布理論とその統計推測,とくに多変量推測統計への応用に関する研究を行った.扱う問題は添字集合が滑らかな閉多様体である正則な場合と滑らかでない場合,すなわち添字集合が特異点を含むような非正則な場合とに大別される.後者の方がその数学的取り扱いが難しいが,そのような場合の具体的な例として昨年度は2元順序カテゴリカルデータにおける独立性仮説の検定のための尤度比検定統計量の漸近帰無分布を導出した.本年度はそれに引続きその漸近帰無分布を数値的に計算するための計算機プログラムを整備した.効率的に最尤推定値を求めるためには繰り返しニュートン法と分枝限定法が有効であることが判明した. また本研究課題を通して用いている積分幾何学的手法(チューブ法)は,確率場の最大値の分布理論のみならず,統計決定理論,とくに推定理論に用いることができることも明らかになった.具体的には,超曲面あるいは凸体へ射影する縮小型推定量で,射影の足の曲率に応じて射影率を調整する推定量を構成することができた.とくに主成分分析モデルにおいてそのランクがあまり大きくないことが事前知識として想定される場合,あるいは回帰モデルにおいて事前情報として非線形回帰曲面が想定される場合などにおける縮小推定量を具体的に構成した.
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