研究概要 |
本研究では、非構造格子系や動的負荷分散を伴う問題に並列分散処理を容易かつ効果的に適用するためのアルゴリズムについて研究した。移流項のない偏微分方程式を離散化して得られる、疎で対称な大規模連立一次方程式に対しては、前処理つき共役勾配法(preconditioned CG法,PCG法)が有効な解法であるが、PCG法の速度は,利用する前処理による収束率の改善と,前処理部分の並列性に依存する.本研究では、元の問題にある空間的局所性を利用することなく、ある程度一般的な係数行列に対して、並列性の高さと収束の速さと同時に実現するアルゴリズムを提案した。ライブラリに組み込む場合など,離散化やオーダリングの性質がわからない場合にも適用できる。本研究では,与えられた行列のみを利用する並列性の高い前処理として,3重対角部のCholesky分解に基づく 2回反復Jacobi法を変形した定常的な反復法を提案・実装した。この方法は、副対角要素がほとんど非零であれば、一般の疎行列に適応できる。また,Cholesky分解後の対角要素が1となる新しいスケーリング法を考案し、演算量の現象を計った。数値実験により、1次元、2次元、3次元の問題に対し、共通のアルゴリズムにより点 Jacobi前処理と比較して収束が速いことを示した。
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