研究概要 |
近年の高性能プロセッサでは,命令レベルの並列性を厳しく制限する分岐命令の影響を緩和するために,分岐命令の結果を予測し後続命令を投機的に実行するという手法が一般に用いられている.本研究の目的は,この分岐予測を行う機構の精度を向上させることである.本年度の研究実績は以下の通りである.第一の成果は,従来データ依存を緩和するために用いられていた値予測機構によって,分岐命令のオペランドとオペコードを予測し,それらの予測結果を利用して分岐方向を予測する機構を提案したことである.本機構は,値予測という新しい手法を導入することで,従来の分岐予測機構では予測困難だった分岐を予測できるようにした.第二の成果は,本予測機構が計算機性能にどの程度影響を与えるかを測定し,予測精度をさらに向上させる手法を提案したことである.第三の成果は,破壊的競合の削減により高い分岐予測精度を実現するsgshare予測機構において、従来のPHTの選択器に代わって分岐履歴情報を付加した選択器を用い、選択器の変更が予測精度に与える影響について評価を行ったことである.本評価により,選択器の変更により予測精度を向上させるための指針を示すことができた.第四の成果は,複数のパスに対して投機的実行を行う両パス実行において,分岐方向の偏りに着目して動的に分岐予測を行う対象を限定する手法を提案したことである.これにより,両パス実行の判断の精度を向上させることができる.第五の成果は,命令レベルの並列性を引き出すために鍵となる基本的技術である分岐予測の精度を改善し,コストを低減させる機構を提案したことである.
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