疑似定規提案のための基礎研究として昨年度の研究で得られたガウス曲率や平均曲率に関する曲面の知見に引き続き、今年度は次の事柄が明らかとなった。 1. 曲面は一般的に三角形パッチで近似表現されるが、各パッチの法線ベクトルの向きで分類して検討することが重要である。 2. 三角形パッチの法線ベクトルの向きは曲面の特徴稜線にしたがって区分できる。 3. 特徴稜線は(a)稜線間の繋がり関係、(b)隣接三角形パッチの成す角、および(c)パッチ間の位相距離、に基づいて定義されるエネルギー関数を用いれば十分な精度で自動検出できる。 さらに、疑似定規の生成すべき曲線の検討の結果、次の事柄が判明した。 1. クロソイド曲線は曲率の変化が直線的であり、形状設計のための有力な曲線と考えられるが、3点以上が基準点として定められた場合は複数セグメントを滑らかに接続する必要が生じ、この作業は一般に容易ではない。 2. Bezier曲線のセグメント(一部)を生成するような疑似定規を仮想的に実現することは容易であるが、得られる曲線は曲率変化という点からはそのまま定規曲線として採用するには問題が多い。 3. クロソイド曲線とBezier曲線との折衷曲線としてBezierスパイラルというものが考えられるが、この曲線セグメントこそ疑似定規の目指すべき曲線である。 4. Bezierスパイラルを疑似定規に応用するためには既存の雲形定規との親和性も考え、曲線の次数を3(制御点の個数を4)とするのが適切である。 5. 第1制御点と第3制御点の中点に第2制御点を固定した場合は、Bezierスパイラルの存在範囲を解析的に求めることが出来る。 6. 第1制御点と第3制御点とを結んだ直線上に第2制御点が存在する場合のBezierスパイラルは数値的に求めることができ、この場合の曲線セグメントが疑似定規の生成すべき曲線として選ばれるべきである。 これらの結果によりインタラクティブ形状設計のための疑似定規プロトタイプが提案できた。
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