研究概要 |
本研究では,命題論理の充足可能性問題(SAT)を解くニューラルネットワークLPPHに対して,グローバルな解(SATの解)への収束性の検討,より高速に解を求めるための改良,および,配線問題への適用に関する研究を行った. グローバルな解(SATの解)への収束性に関しては,力学系の減衰係数が大きく関与している.問題ごとに最適な減衰係数の値が存在し,小さすぎる値での収束性の悪さと,大きすぎる値での悪さの原因が異なることを考察した.この原因を回避するために,LPPHに2種類の重みを持たせることを提案した.一方は,0もしくは非常に小さい減衰係数を持ち,他方は,ある軽度大きい減衰係数を持つ.このことにより,解を求める時間,および,最適な減衰係数の決定のしやすさ等が改善できることを示した. 解を求める時間の短縮のための,もう一つの方法として,ニューロンの各結合に注目度と呼ばれる係数を導入し,その係数を制御する方法を提案した.本手法により,与えられた充足可能性問題のクローズの集合のうち,解くのが困難なものが注目を受け,より優先的に充足され易くなり,結果として効率良く解を見つけることができるようになる.実験により,特に難しい問題ほど本手法が有効であることが分かった. 配線問題に関しては,コストが凸関数である最小コストフロー問題の双対問題を解く手法を組込んだ手法を提案した.従来の引剥し再配線を用いた迷路法では配線のできないいくつかの問題を解くことができるという実験結果が得られた. 今後の研究課題としては,人工知能や認知科学の分野での応用,MIN-SAT等,目的関数がある問題への適用,ハードウェアによるニューラルネットワークの実現等を考えている.
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