本研究の目的は、オブジェクト指向地図データベースにおけるビユーを提供する機能と、拡張性を実現する機能を統合し、利用者に対して仮想的にデータベースを再構成する機能を提供することを実現するものである。 我々は、既に、ビューを規定する視点として、利用目的、地図の範囲(地域)、情報密度(地図の縮尺に対応)の三つを提案している。ここでは、情報密度に関して、三次元市街値地図の描画法についてと、地図の範囲にかんして、問い合わせに対する検索の範囲に関して考察を行った。 まず、三次元市街値地図の描画法に関して、従来のLOD(level of detail)の概念の拡張を提案した。ここで、LODはビューにおける情報の詳細度に対応する。従来は、LODとして、視点からの距離が用いられて来たが、ここでは、これを拡張して、建物の重要度という尺度を提案した。重要度は、建物の高さ、大きさ、有名度、歴史性などからなる。LODは、視点からの距離と、ここで提案した重要度の組合せにより表現される。従来の縮尺の概念は、地図全体に亙って情報密度を一意に規定していたが、ここで提案したLODは、利用者の要求により、地図の部分によって、動的に情報密度を変化させることができる。 次に、道路網地図こおける経路探索を題材に、問い合わせに対する検索の範囲に関して考察した。経路探索に関しては、始点と終点の周辺、およびそれらの周辺を結ぶ主要道路のみを検索の対象とすれば良く、道路網全体を検索する必要は無い。そこで、インプリシットなビューとして、始点と終点を含む地域とそれらの地域を含む大きな地域における主要道路網を抽出し、そのビューを用いて経路を探索するアルゴリズムを提案した。 以上の二点により、地図データベースにおけるビューの概念にあらたな視点が導入されたと考えられる。
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