研究概要 |
本研究では、分散システムの性能と信頼性の向上および拡張可能性の確保を目的として、オンラインで動作するネットワーク構造の分散システムを対象に以下の5項目について理論的および実験的に考察した。 1.オンラインルーティング・スケジューリングアルゴリズムの開発(主として上土井)分散システムで効率良く負荷を分散するためマシン上での負荷と通信オーバヘッドの和の最小化を目的としたオンラインルーティング・スケジューリング問題を定式化した。理論的解析をもつアルゴリズムを基に一般的に用いられている貪欲法よりも良質な解を高速に求めるオンラインスケジューリング手法を提案し、オンラインルーティング・スケジューリング問題に対するアルゴリズムに拡張した。 2.合意問題に対する局所アルゴリズムの開発(主として吉田)分散環境で複数の非同期なプロセスの同期化に重要な応用をもつ合意問題に対する局所アルゴリズムである共有メモリアルゴリズムを開発した。提案アルゴリズムでは複数のプロセスが協調し、かつ、停止故障したプロセスが存在しても故障していないプロセスが同じ合意を得ることを理論的に証明した。 3.応用分野でのオンラインルーティング・スケジューリング手法の適用課題に対する考察(主として上土井)オンラインルーティング・スケジューリング手法を実際に適用する際に有用な2つの課題(1),(2)について考察した。(1)負荷の存続時間の考慮:1.の研究では負荷を永続負荷とみなしていたが、実際的な未知有限の存続時間をもつ負荷に対するオンラインアドミッションコントロールアルゴリズムを提案した。(2)ネットワーク分割手法の開発:提案手法を局所アルゴリズムとして実現する場合のネットワークを複数の部分ネットワークへ分割する問題をグラフ分割モデルとして解析し、それに基づいた高速アルゴリズムを提案した。 4.データマイニング技法の局所アルゴリズム化に対する実験的考察(主として吉田)データマイニング技法に対して、分散アルゴリズム化を目的として、データ間の類似性に基づく重要な技法であるκ近傍探索と、クラスタリングにおいて単純なデータ格納方法である固定格子による効率的な手法を開発した。また、実験的に分散アルゴリズム化における分散実行の粗さに着目し、格子の粗さによる提案手法の性能変化について実験的に考察した。 5.耐故障性をもつ局所アルゴリズムの故障検出問題への適用(主として吉田)共有メモリを介して情報を通信する局所アルゴリズムを非同期故障検出問題に対して適用した。提案手法がある時刻前に実際に発生した故障だけをすべての正常なプロセスに知らせる完全非同期故障検出を行うことを理論的に証明した。
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